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アパレル特化の3Dモデリングソフト【CLO】とは

黄色ライン
3Dモデリングソフトの活用

本日は、弊社で導入した衣服や服飾雑貨などのアパレル製品に特化した3Dモデリングソフト「CLO」をご紹介します。

「CLO」を使うとどのようなことが可能になるのか?
今後どのように活用していくのか?
弊社のパタンナーさんにインタビューを行いました。

3Dモデリングソフト「CLO」とは

-「CLO」とはどのようなソフトなんですか?

CLOは韓国の会社が開発したアパレル製品向けの3Dモデリングソフトです。
洋服を作る際には、パターン(型紙)を作成し、そのパターンをもとに洋服のパーツを作成します。
そしてそのパーツを立体に組み立てることで、洋服の形になります。

この一連の流れをバーチャル上で可能にしたのがアパレル製品向けの3Dモデリングソフトです。
今までは手元で布を使って作業していたものをバーチャルでやったらどうなるか、という視点で開発されたものです。

-「CLO」の特徴はどういったところですか?

「CLO」以外にもアパレル製品向けの3Dモデリングソフトは複数あります。
その中で、今現在では「CLO」が最も魅せることに特化して作られているソフトだと言われています。
元々はゲームのキャラクターが着る衣装を作るために開発されたものが転化してきたものなので、よりかっこよく魅せることに特化しています。
複数あるソフトの中で「CLO」が人気なのは、見え方が美しいからです。重力を計算し、リアルに近い形を作ることが可能だからです。
CLO画像1
右側の画面に直接パターンを引いて、それをリアルタイムで3Dで縫い合わせた形として見ることが可能です。
その場で色や柄の大きさ、袖丈や着丈の長さを変更したり、服の素材を適用したりしてシミュレーションすることが出来るので、実際の服を作らなくても簡単に出来上がりをイメージすることができます。

「CLO」導入のメリット

-「CLO」をファッションの業界に取り入れることのメリットは何ですか?

大きく業務の効率化の面とサステナビリティへの取り組みに繋がるという2つの面があります。
CLO上では精密な線のパターンを引いて、細かい微調整をしなくてもある程度シルエットの綺麗なスカートのモデルを見ることが可能です。
パタンナーがいなくても、デザイナーの手で丈の長さを調整したスカートのイメージ画像が作れます。
そして、デザイナーが作成した立体画像と元のパターンを工場に転送すれば、工場のパタンナーがそれを縫えるパターンに修正して、同じイメージの服を作ることも可能です。
CLO画像2

こうすることで、服の製作スピードが上がったりメーカーが人件費を削減できたりするというメリットがあります。一からすべて手作業で行ったら丸1日かかる作業が、およそ1時間で出来てしまう場合もあるので、CLOなどのソフトを導入し効率化を掲げているメーカーは徐々に増えています。

ただ日本国内では、それほど簡易なパターンでは良い洋服は出来ないと考えている方が多いので、少し異なった使い方がされています。
パタンナーが2Dのパターンを作り、立体にして確認の出来た完成したパターンをCLOの中に取り込み、それを3D上で組み立てて洋服のモデル画像にするという使い方です。

平面のパターンを立体に成形して確認することをトワルチェックと呼びます。
実際に洋服のサンプルを作る前に、仮の素材で半身だけ組みシルエットを確認して、これで良しとなったらサンプルを作成します。半身のトワルチェックが一般的なのですが、CLO上ではそれを両身にすることがとても簡単なので、誰でも容易にシルエットの確認を行うことができます。
またサンプルを作る前に、画像を見ることでイメージを共有することができます。手作業でやると両身のトワルチェックは半身の2倍の時間がかかりますが、CLO上では、半身のモデルも両身のモデルも大差ない時間で可能になります。

そして素材や色、柄の大きさなどを変更することで、とても簡単に生地の風合いまで反映した完成イメージを作成することができるので、大幅な時間短縮と労力を削減することができます。
社内にパターンがあるサンプルをCLO上に組み立てました。

CLO画像03

作成した服の3Dモデルの色は画面上でいくらでも変えることが出来ます。
候補の色や柄のサンプルを全て作成しなくても、サンプル1色とCLO上のシミュレーションを組み合わせることで何色を実際に作って販売するのかイメージを持って決定することが出来ます。
このように、サステナビリティの面でもメリットがあります。
サンプルの作成と修正を何度も繰り返して販売する色を決める場合もあるため、実際に店頭で販売されたり、人に着用されたりすることのない服がたくさん作成されているという現実があります。

ネックの形を変えたり、スカート丈を変えたりする程度であれば商談中に変更できてしまうので、360°全ての向きから見てその場でデザインを絞ることができます。
標準体型のアバターを作ってしまえば、一般的にどんな見た目になるのかも目安にしやすいです。
バーチャル上でイメージを作ることで、服が販売される以前の時間ともののロスを削減していけたらいいのではないかと思っています。

3Dモデリングソフトの活用
その他の利点としては棚を作ったり、ハンガーラックを設置したりすることも可能なので、画面の中でショップのレイアウトを作成することも可能です。箱や椅子、机を配置したり、ハンガーにかけたイメージを見ることも出来ます。
カラー展開を並べて配置することも出来ます。
これをクローゼットというオンラインプラットフォームで世界中で共有し、販売員さんが直接要望などをかきこむことで、現場の声を反映した変更も迅速に出来るようです。

「CLO」を活用した今後のファッション業界の在り方

-「CLO」などの3Dモデリングソフトの活用による、今後の展望を教えてください。

まず世界の大きな流れとして、欧米のメーカーはサンプルを作らなくなってきています。
サンプルの輸送にかかる費用や輸送に伴う環境への影響も大きいので、サステナビリティへの意識が強い海外の国では、3Dモデリングソフトの活用が進んでいます。
今現在は商談にキャリーケースに大量のサンプルを入れて持参していますが、ノートパソコン1台で完結し、ゆくゆくは商談に出向く必要がなくなり、データだけ送信すれば良くなる時代が来るかもしれません。
CLO以外のソフトも併用することで、服を作る前に3Dの服の画像をネットに掲載し受注生産することも可能になると思います。よりリアルな質感を表現し、アバターではなく、本物のモデルさんの画像を使ったり、外の風景を合成したりした画像を作成するのです。

また、服を買うときに自分のサイズに合わせたアバターを作成し、着せ替えを可能にするものも開発が進んでいます。
別のアニメーションソフトを組み合わせて、ファッションショーをやることもひとつの目標とされています。人を集めずにファッションショーが出来るので、コロナ渦でより注目されているのではないかと思います。
過去に大手ファストファッションブランドのCMにバーチャルモデルが起用されました。そのモデルさんの服はCLOで作成されたものです。
アニメーションの動きも細かくリアルなので、VTuberのキャラクター用の服の作成など仮想上でも今後は需要が高まってくるのではないでしょうか。
可能性は無限大です。

「CLO」が普及していくと、パタンナーは不要になるのでしょうか?

そういった意見もありますが、それは違うと思っています。2Dよりも3Dのほうが良いものが作れるというのはまた違うと考えています。
服を作る上で大事なのはデザインという見た目だけではなく、実際に着た時の着心地も非常に大事です。運動量に合わせて、それに追従するような服を作っていく為には技術が必要だし、「CLO」で作る3Dモデルを向上させていくためにも技術は必要だと思います。

CLO上の見た目には分からない、ほんの1ミリ、2ミリのこだわりで身体への馴染みや縫いやすさが変わってきます。平面の布を立体の身体に沿わせるので、肩傾斜の数ミリの違いが着心地を良くするために重要です。
私たちパタンナーは着心地とデザインの両軸を大切にしており、そこに時間をかけています。
パタンナーの技術と「CLO」を併用していくことが理想だと考えています。
少なくとも1品番につき1枚はサンプルを作って、人が腕を通し着心地を確認することは絶対必要だと思います。
ただ作成するサンプルが1枚なのか、10枚なのかは大きな違いです。
サンプルを作成する前に「CLO」を活用して、ある程度デザインを固めておくことでよりサステナブルに見た目も着心地も担保された服つくりが可能になると思います。

現段階では、既存の服の3Dデータの作成や、3Dモデリングソフトを導入するのに時間と人件費がかかり、導入に踏み込めない会社も存在すると思います。ただ現時点で経費がかかっても、将来的には経費削減になるのは間違いないと思います。
また、今まで当たり前だった服づくりのプロセスを変化させることに技術者として抵抗もあると思います。しかし、「そうはいっても」というものをある程度切り捨てていくことも、世界的な流れに今後乗り遅れてしまわないために重要だと感じています。
人の手の良さと最新の技術の良さをうまく掛け合わせることで、よりよい服作りが可能になると思います。

-最後までご覧いただきありがとうございました!

サントラージュはこれからも、より良い服作りに取り組んでまいります。
興味を持ってくださった方は、是非お問い合わせください。